委員会活動

【13.07.26】7月県例会

講師:㈱カンディハウス代表取締役会長/北海道同友会道北あさひかわ支部 支部長 渡辺 直行 氏
テーマ:「カンディハウスの海外戦略」


7月26日(金)ホテルサンルート小松にて2013県例会が行われ、89名が参加した。以下講演要旨。

その1 海外戦略

■仕上げは人間の手で
 1968年に北海道旭川で株式会社インテリアセンターとして創業した。海外ビジネスを展開しなければ成長は難しいと考え、1984年にサンフランシスコに現地法人を設立した。2005年には、社名をカンディハウスに改めた。社員270名のうち、4分の1がデザイン系の学校を卒業しており、当社はデザインの強みを特長とする。
 また、社員の技術と技能も会社の強みだ。技術は数値で表すことができるが、技能は簡単に教えられず機械にも替えられない。社員には資格取得を推奨し、社内に資格と名前を掲示している。コンピュータ制御の加工機械を導入するなど機械化が進んでも、最終工程ではサンドペーパーを使って人間の手で仕上げる。これまで国立国会図書館関西館の設備施工や司馬遼太郎記念館の書架など難しい物件も数多くこなしてきた。


■ジャパンEXPO出展
 1980年に北海道の家具メーカー11社が集まり、サンフランシスコにショールームを開設した。その後、電話帳でインテリア店を探しセールスしたが、なかなか成約には結びつかない状況だった。
 当時、日系人がロサンゼルスに30万人、サンフランシスコに3万人住んでおり、日本人向けの販売を思いつき、ロサンゼルスで開催されていたジャパンEXPOに出展した。下駄箱等の家具は売行き好調だった。翌年も出展したが初回の勢いはなく、この出展は止める結論を出した。日系人対象のビジネスだけでは駄目だと気づいた。


■CI取り組み、オファーも
 1985年、会社のロゴマークを作り、CI(コーポレート・アイデンティティー)に取り組んだ。新たなショールームのデザインも建築家に依頼した。その結果、サンフランシスコのショールームの評判は極めて高くなり、バンク・オブ・アメリカからオファーが入り、アップル・コンピュータからは会議室のテーブル製作の仕事が来た。なぜ、小企業にアメリカの一流企業から仕事が入るのか、それはデザインの力だと確信する。


■円高に一喜一憂せず
 調子が良いと思っていたさなか、1985年にプラザ合意で円高となり、市場の急速な変化に遭遇した。1ドル260円が93年には80円に。日本円はドルに対し4倍に跳ね上がった。やむを得ず値上げを繰り返すうちに顧客は来なくなった。しかし為替が変われば物価も変わる。短期的な動きに一喜一憂せず、為替の変動は10年単位で考えるべきであることを学んだ。


■リービッヒ城跡に移転
 2005年にドイツに現地法人を設立し、ケルンのインテリアショップ・ペッシュに場所を借りてショールームを開設した。以来、ケルン国際家具見本市には毎年出展している。
 2007年にはドイツを代表するデザイナーのペーター・マリー氏のデザインで新製品を開発し、彼が京都で感じた日本のエッセンスを海外発信した。その後、欧州の事業は徐々に軌道に乗り、今年からは建物全体がインテリア店となっているドイツのリービッヒ城の中に80坪ほどのスペースを借り、ショールームを展開している。


■情報共有と数値開示
 創立40周年に5万坪の土地を購入し、毎年植林を実行している。社訓(社会に役立つ・品質重視)を記したカードを社員全員が持つ。月曜日に全体朝礼をして整理整頓5Sなどの方針を徹底させる。毎月、社内報を作成して情報を共有、月初めには全ての部門の会議日を設定する。月次決算はリアルタイムに行い、管理職に配布して経営数値を開示している。  

その2 アメリカ出張報告

■アメリカは人口増へ
 今後、日本の人口は少子高齢化で急速に減少する。それに対し、アメリカでは過去30年間に1億人も増え、今では3億人を超えている。65歳以上の人口は日本が24%であるのに対し、アメリカはまだ12%だ。先進国の中で唯一、アメリカは若さを保ち続けている。


■中小企業が時代を拓く
 リーマンショック以降、先端企業で働く若者もサンフランシスコ市内のアパートに住み、通勤にはバスや自転車を使っている。サンフランシスコの新聞社の一角にはHUBという名のシェア・オフィスがあり、ごく安い会費で利用できる。アメリカ人はお金を掛ける必要がないところには徹底して掛けないという考えだ。また、TechShopではあらゆる工作機械を誰もが安価に使用できる。この街では未来を拓く新しい社会実験を見ることができる。
 アメリカにはガレージからスタートした大企業が多い。そこがインキュベーションの場所となったのである。市内に作られた新しいアパートにも必ずガレージがあり、起業家の出現を待っている。ここには志の高い個人や中小企業が活躍できる舞台が用意されている。日本においては全企業の99.7%が中小企業である。アメリカ社会のトレンドから、私たち中小企業が時代を拓く主役であることを自覚させられた思いである。  

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