【09.08.24】のと・北金沢合同8月例会
社員の会社人生の青写真を描く
「社員との信頼関係を築く経営理念」~成文化を通じて事業承継の舵取り~
報告者 星野幸博 氏 ㈱かじそ仏壇製作所 社長/福井同友会代表理事
戦国時代、刀鍛冶師の鍛冶屋惣兵衛が先祖。明治になり廃刀令と共に仏壇と食料品を扱う様になった。
平成元年に大野の本店から福井に出店し店長となり、平成七年に同友会に入会した。平成九年に専務に就き経営指針づくりに取り組んだ。理念を三つ作ったが、途中で何度も家内の父親である会長と議論があった。このことによって後継がスムーズにいったと思っている。作りはじめて三、四年後に社内で公開した。朝礼で唱和して下さいと言ってあったが、店に見に行くと、文に線を引いて書き変えてあった。コンサルタントを雇い、社員から思っていることを書き出してもらったら、思いもよらず沢山出てきた。「ポリシーがない。リーダーシップがない。同族会社で隠し事が多い、発展がない。・・・」腹が立って仕様がなかった。コンサルタントからは「宝物ですね」と言われラミパックしてパソコンの前に貼った。毎日見ていると一年くらい経つと、言われる通りかもしれないと思い始めた。経営者と社員のコミュニケーションは家族や友達とは違うと気づき労使見解を読み返した。そして、社員の会社人生の青写真を描いてやることが一番のコミュニケーションだと気づいた。社員が仕事を通じて喜びを得られるか、何のために仕事をしているのかを教えていく。結局、企業は不平等の塊、社員の不満の塊だということに行き着き、矛盾を一つ一つ解決することも経営者の大きな責任だと感じた。
人事考課制度を導入し、社員にはこう育って欲しいと伝え、それによって給与が上がることを約束した。賃金表も公開し利益計画も説明した。年二回の賞与は面接してお互いに言いたいことを言い、自己評価と会社評価の価値観の違いを埋めた。同族会社で経営状態がわからないという不信感を払拭するために決算書も公開した。社員の本気度を計るために幹部社員に株式を譲渡して、株主の立場も自覚させた。あとは社員の中で取締役を出し後継者にバトンタッチをして、企業の夢、将来を社員と一緒に考えて行きたいと思う。
一つのことを成就するのに十年かかる。理念を作って十年、十一年目から結果が出ると思っている。経営環境が厳しい現状では、売上が四割ダウンしても三年間は持ちこたえられる財務体質にして、今後の成長戦略を描いていきたい。社員の雇用は絶対に守りたいと思う。これからは理念型経営の追求から理念の戦略型経営にシフトして、いかに生き残るか、利益を出すことも考えていきたい。