【13.05.01】景況調査1~3月
現在の経営状況は全業種で悪化
4月1日から10日まで実施した景気動向調査の結果がまとまった。会員企業を対象に経営の状況、経営課題について記入してもらった。408社の内93社(23%)より回答を得た。
売上高・経常利益DI下降
現在(1~3月)の経営状況を全業種(下表)でみると業況判断DI(「好転」―「悪化」企業割合)は1月調査から売上高DI、経常利益DIが下降した。売上高DIはプラス22.5から0へ、経常利益DIはプラス18から6.5へ下降し、資金繰りDIは0から7.5へ上昇した。
業種別に見ると建設業の売上高DIが15ポイント下降して1月のプラス5.9からマイナス9.1に転じた。経常利益は6.4ポイント上昇した。さらに製造では売上高DIがプラス53.8からマイナス14.3と68.1ポイント下降となり、経常利益DIも1月のプラス23.1からマイナス7.1へ30.2ポイント大幅に下降した。サ卸小売業は18.2からマイナス22.2へと下降。唯一サービス業だけが売上高DIが、22.5から25に微増した。
原材料価格(仕入)DI(「上昇」―「下降」割合)は、建設業が36.4、製造業は46.2と大きな値を示した。特に製造業では円安の影響で原材料の単価が上昇し状況が圧迫されており、全体の悪化に影響している。
今後の見通し好転予想
経営の見通し(4~6月)を全業種(下表)で見ると、売上高DIは18から38.7へ、経常利益況DIも16.1から43.9へ大きく好転している。業種別の見通しでは、建設業の売上高DIは23.5から54.5へ、製造業の売上高DIが8.3から35.7へ、サービス業が27.8から41.7へ大きく好転を予想している。卸小売業だけが売上高、経常利益ともに微減を予想した。
自社の最大の経営課題は人材育成が38.5%、売上高増加が19.8%、収益構造改善が18.7%を占めた。
春の新卒採用約4割
2013年4月の新入社員採用については、採用した企業が36.8%で、平均採用人数は1名だった。
障がい者雇用については、雇用している企業が24%、授産施設等に仕事を依頼している企業は約7%だった。
改正高年齢者雇用安定法施行についての質問では、同法の企業義務について知っている企業が約91%、希望者全員に対し65歳までの雇用延長義務化を知っている企業は85%だった。具体的な取組み内容としては、就業規則改正、継続雇用制度導入、65歳以降70歳まで雇用するプラチナ社員制度を導入(但し本人希望に基づき会社が決定)、などがあった。
総評
景況動向については、回答率が低いのと、季節変動があるので(前四半期比較では)はっきりしたことは言えないが、新卒採用率など各種指標を見比べる限り、この一年間で目に見えるほどの景況変化があった訳ではないと思われる。むしろ今後の動向に注意が必要である。
円安で景気回復への期待がもたれているが、県内企業に対しては原材料価格の上昇という形で影響が出ているようである。逆に受注単価の上昇は少数にとどまっている(上昇16%、横ばい70%、下降14%)。円安は輸出企業にとってはメリットだが、受注単価に反映されなければ、内需型企業や下請け企業にとっては単なる材料費負担の増加になる。2002~2007年の景気回復期に、北陸では、全体的に売上げは回復したが、粗付加価値額・従業者数・県民所得は低迷したままであった。仕事は増えても利益は増えない構造の下では、今回も同じパターンに陥るかもしれない。円安を景気回復の呼び水とするには、中小企業の海外販売率を上げて、価格交渉力を高めていくことが条件となろう。
佐無田 光 氏(金沢大学 人間社会学域 准教授)