【21.09.01】事業承継(62)
ビジョンを描き本当の事業承継へ
福和商事株式会社
代表取締役社長 齊田 太士 会員
同社は今年で創業92周年を迎え、長年作り続けている自慢の麺と厳選した食材で丁寧にとった自家製の出汁で、金沢の食文化を支えてきました。現在は「小橋お多福」「饂飩処・釜ごはん福わ家」「小橋カフェOTABA」の3店舗を経営しています。
■バラバラな組織に未来が心配
齋田会員は調理師専門学校を卒業後、県外の飲食店での経験を経て金沢へ戻りました。後継者として自社を継ぐ覚悟を持ち2014年に同社へ入社します。
入社後は、家族経営ということもあり、仕事とプライベートを切り離さずに関わってくる先代や女将との関係性に悩みます。その結果、敢えて家族とは仕事以外で接点を持つことを避ける様になりました。特に、先に入社していた弟とは考え方やスキルなどの違いや劣等感から疎遠になりました。それからは会社の中身がバラバラになっていっていると感じ、会社の未来を心配する様になります。
■名ばかりの事業承継で力のなさを自覚
そんな中、齋田会員は2019年に事業承継をし、会社の代表となりました。「先代が現役である中、今じゃなくても良いのでは?と疑問に思いながらも、とりあえず役職だけ継いでおけばいいくらいに考えていた事業承継だった」と言います。
それでも、自身が代表になれば、リーダーシップで会社の中身を変えていけると思っていましたが、そう甘くはありませんでした。承継後も先代の影響力はお客様にも社員に対しても大きく、自分自身の力のなさに落ち込む日もありました。
■同友会で気づいた、まず自分が変わること
悩みの渦中にあった齋田会員は金谷道憲会員の誘いを受け、2年前に同友会に入会しました。多忙な業務の中、参加した支部例会や青年部会の活動で本気本音で関わり合う会員の姿に大きな刺激を受けました。
まずは自分自身が変わらなければと強く感じました。そして、ビジョンを持つことの大切さや、経営者としての本当の役割、言い訳だらけの自身からの脱却、家族との一体経営に気づかされました。
今後について、「同友会内ではもちろんのこと、先代や社員さんとの腹を割った関わりをしていく。そして先代の想いを承継し、経営者としての自分、会社のビジョンを描くことで本当の意味での事業承継を必ず成し遂げたい。もう一人の代表である弟とも、互いに出来ることが違うからこその利点を活かして力を合わせて支え合っていく」と決意を持って語ってくれました。