【22.05.01】事業承継(70)
承継すべきは「町の便利な住宅屋さん」
株式会社昭和住宅
取締役部長 林 義人 会員
同社は、1963年創業で住宅に関わる設計・建築、不動産売買・管理などを展開しています。林会員は、同社取引先の建築資材・不動産業での修行を経て2016年に後継者として入社以来、営業を中心にお客様と接する業務を担っています。
◆大学中退で承継準備
林会員は、大学で機械工学技術を学んでいましたが、販売などお客様と接する仕事に魅力を感じ始め将来を迷っていたところに、現社長の父親から承継の意思確認を受けたことをきっかけに、承継を決断し21歳で大学を中退しました。卒業を待たなかった理由は、父親が20歳の時、47歳の若さで創業者の祖父を突然亡くし、事業運営に大変苦労したことが頭によぎったからでした。「縁起でもないが、何かあってからでは遅い」として、一刻も早く承継の準備を急ぎました。
◆危機管理を徹底的に考える
同友会との出会いは、ゲスト参加した事業承継セミナーで具体的な学びを得られ、魅力を感じたことから、(株)第一地所の山岸会員の紹介で2020年に入会しました。コロナ禍でもオンラインで同年代の青年経営者の話はもちろん、長年経営されてきた会員の苦労や解決等の経験談を重要視して学び続けています。それは、自身のこれからの危機管理を徹底的に考えているからです。
林会員は、何をすべきかを考えたところ、まずは社員の働く環境の改善に目を向けました。現代の働き方に合わせ、男性の育児休暇を作るなど就業規則を大幅に見直しました。見直しは何よりも社員を大事に思うことからでしたが、今後問題となり得る雇用の定着・確保に備えるためでもありました。
◆長年築き上げた存在価値
同社は今まで60年近く地域に根差し、いつも地域の声に耳を傾けています。時には町内イベントに管理物件の提供をするなど地域に頼られ、気軽に立ち寄れる存在であることが魅力です。
林会員は、その長年築き上げた「町の便利な住宅屋さん」としての存在こそが最も引き継くべきことだと考えています。今後は「注文住宅の対応力の強化や支持されるお客さまを増やすため更に自社の強みをはっきり見出したい」「知名度を上げ若い人がもっと『入りたくなる会社』にしたい」など、将来の抱負が尽きません。
大学を中退したほど、行動には一刻も無駄にしない姿勢が伺え、これから経営者としてのスピード成長を予感させます。