委員会活動

【08.04.23】第33回定時総会 基調講演

労使見解が時代を乗り切る最大の保障~リストラの基本は社員の意識改革から~

  ■事務局員として理念を学ぶ
 襟裳岬の浦河町で公務員をしていて三十五歳で札幌の同友会事務局で七ケ月間、事務局員をした。北海道同友会は今は五千二十三名、当時三百人だった会員を拡大した。経営者の考えや悩み、経営哲学を聞き、同友会の三つの目的、自主民主連帯の精神、国民や地域と共に歩む中小企業といった理念を学んだ。
■給与2倍、売上八〇%増
 一九七四年、アイワードの前身である共同印刷に一月から常務として出勤することになっていたが、仕切っていた専務が休んでいて連絡が取れず、四月十二日に自分から出勤した。社員二十名、平均年齢二十五歳、売上五千八百万円の会社だった。専務が休んでいたのは、十二月に労働組合との間で三ケ月分の年末手当を約束したが支払えずストレスから休んでいたことが後で分かった。社内は古新聞や雑誌が積まれ、灰皿は吸殻が一杯、トイレも汚い状態だった。直ぐにクレンザーとワックスを買ってきて磨き、トイレ掃除を始め、三・四日すると、社員から自主的な声が出てきた。労働組合の委員長からの団体交渉を受け、①年末手当未払い分の支給、②繁忙期対策、③三六協定、の三つの要求が出された。手当は協定した以上支払わざるを得なかった。世間は二十五歳で五万円の給与だったが、当社は三万円だった。世間並みにならないなら十人は辞めたいと考えていた。どうせ苦労するなら望むことでと思い、売上を倍にしなければならないことを説明して四月から給与を倍にした。その年は売上を八〇%伸ばすことができた。
■経営計画で十年後自社ビルを
 昭和五十年、中同協が労使見解を発表し、三つのことを学んだ。①どんな厳しい状況になっても経営者は経営と社員の生活に責任を持つ、②経営指針を作らなければならない、③従業員を最も信頼できるパートナーと考える。一泊研修をして経営指針を作ることにした。どういう会社づくりをしたいか、私が一時間程話し、それについてテーブル討論させる。三、四回目までは否定的意見しか出ず、最後に悪いのは経営者だと結論づける。五、六回目になると我々も何とかするべき事があるのでないかという話になる。理念は「お客様の期待にお応えします」とした。残業で文句が出ても基本理念を言うと納得する。期待に応えることを実行したら急速に会社が変わった。
 経営方針は三つあり今まで変わっていない。①民主的に運営する。情報を共有化して開かれた経営をする、ということと性別や障害による差別をしないということ。②自主的・自覚的行動を大事にする。例えば展示会の参加者やセクションの希望も原則申告制を執る。③目標と計画を大切にする。短期計画、中期計画を決めている。昭和四九年の短期のスローガンは「世間並みの給料を払っても潰れない会社にしよう」だった。中期のスローガンは「世間並みの企業になろう」で、世間並みの企業を見学して、幹部の中では十年後に売上を十倍にして自社ビルを建てようということになっていた。十年後、売上は五億八千万円になった。経営不振の老舗を引き受けることになった。その後再建し平成五年、共同印刷と合併してアイワードとなった。昭和六十年、立ち退き料一億を元手に中小企業金融公庫の貸付で自社ビルを建てることができた。売上と同じくらいの設備投資をしたら売上は四〇%伸ばさないと償還できない。そのことを社内で話し、お客様の期待に応えられればできると言った。その結果、二年で十一億五千万円まで上げることができた。
■社員共育を重視
 労使見解の三つの要点を実践した。そのほか、①パブリックリレーション(PR)、②非価格競争力、③社員共育を特に重視して考えている。
 PRはどうしたらお客様との良好な関係を持続していけるかということで、「マンスリーアイワード」という社外報を月一回、希望する社員が編集員をして二十五年以上発行し続けている。また価格だけで競争していては駄目で、他社と違った特徴を持つために、北大より雇用し三年間修行に出し、文字情報処理システムの導入に取り組んだ。一九八五年から稼動しだして東京の出版社から広がっていった。今はそれだけでは駄目なので二、三年前から高級カラー印刷を始めている。
 給料を稼ぐという事は、単に稼ぐという小さい事ではなく、世の中の発展のために、必要なものを製造して社会を支えていくという崇高な事だと思う。重度障害者を採用したが、その冬に雪が降ると滑って転びながら歩くので毎日十分くらい遅刻するようになった。努力すればできることは頑張ると言ってくれたから採用したので、意を決して注意した。北海道新聞に、北斗海が腰を痛めて三場所休場したとき、お母さんが「勝つことだけがよくしてくれた人にできることだから…」と肩を叩いて言ったという記事が出ていた。それと同じことで、彼女が幼児期から短大までお世話になった人に恩返しできるのは、アイワードで頑張っている姿を見せることだと思う。批判もあったが、本当にその人を大事に思うからこそ言うべきだと思った。
■変革に本気で取り組む
 四つの会社の再建に取り組んできて、無くなる会社は経営環境の変化に気づかないと感じた。日々変化が加速化している中で、中小企業におけるリストラの基本は従業員の意識変革だと思う。誇れるのは一人も解雇しなかったこと。意識を変えてもらうために本気で取り組んできた。
 北海道は人口減少が問題で、先行き購買力が減ることは必至だ。その中で、業態変革、商売の有り様を考え、従業員全てを人材に変えていく。労使見解に依拠して経営者がどう変わるかだ。その時に一番頼りになるのは共に育ち合う人間関係にある従業員である。これらが厳しい経営環境を乗り切っていく最大の保障だと考えている。

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