支部の活動報告

【08.09.16】兼六支部9月例会

「雇用のプロが明かす雇用の悩み」~士業としての理想と経営者としての現実の間で~報告者:三井 敏彦 会員(社会保険労務士 山田事務所 所長)

  社会保険労務士としての私のスタンスは、経営者側でもなく労働者側でもない。その間にある会社をより良くしていくことが、仕事だと考えている。学校卒業後、山田事務所に入所した。当時は、大変なところに来てしまったと思った。仕事を全く教えてくれないのだ。正に職人の世界であった。仕事は、自分で見て覚えるしかなかった。入所後間もなく、こんなことがあった。ある事案で女性のパートさんが、計算ミスをしてしまった、彼女が正しいものを作成してから、私が、それを持ってお詫びに行こうと考えた。そんなに、時間がかかることでもなかったからだ。しかし、所長から「直ぐ、お詫びに行くべきだ。そしてパートさんに正しいものを、その場へ持って来させるべきだ」と叱られた。仕事は先輩の背中を見て覚えるということ、計算ミスの事案、いずれも今にして思うと、貴重な経験をさせてもらったと思う。入所6年後に所長を引き継いだが、ちょうどその頃、同友会の勉強会に参加し、事務所理念を作った。事務所理念は「ながい目で人を大切にしたい。働くことは端(はた)を楽にすること」。そして、職員というのは理念に共感してくれるパートナーだと考えている。自主性を伸ばすため、やはり、仕事は教えない方針である。所長になりたての頃、こんなことがあった。繁忙期に残業が続いた、仕事を教えないのでミスが起こり、私の指摘で、職員がやり直す。仕事が一向に進まなかった。結果、モチベーションが下がり、一人が退職、もう一人からは仕事がキツイ、給料を下げて欲しいとの申し出もあった。松下幸之助の「苦労をなくして人は使えない」という言葉が骨身にしみた。理念は変えてはいけないが、理念に近づくための方法は、柔軟に変更してもいいのではないか。その後、日常業務については質問を募り、勉強会を開くようにした。しかし、教えすぎはしない。現在では定型業務は、職員が全てやってくれている。今後の課題は、私は素直になりたいと思っている。仕事については、顧問先の数を増やすことよりも、既存の顧問先に対して、より深く関わって行くことが大事だと考えている。(文責:事務局)

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