【08.11.18】経営者フォーラム<第1分科会:エネルギー>
「エネルギー対談」~省エネルギーから学ぶ経営の気づき~
報告者:坂本 勝 会員 ㈱城南運送 社長/松永 日出男 会員 ㈲ユーアンドゆ 社長/吉岡 英一郎 会員 丸一石油㈱ 社長
座長:橋本 忠 会員 マイクロテック㈱ 社長
原油高騰の逆風の中で中小企業の経営者はどうあるべきか、エネルギー問題を切り口に運送業、一般公衆浴場、石油卸売・小売業のそれぞれの立場から省エネについて自社ではどのように取り組んでいるかをポイントに対談した。
※自社の現況と取り組み※
【松永】金沢市の諸江と野々市町の御経塚で一般公衆浴場を経営しており、厳しい環境の中でフルマラソンに挑戦するなどチャレンジ精神を経営にも生かしている。
【吉岡】金沢市に本社を置くエネオスブランドでガソリンスタンド八ヶ所、卸売経由で十四ヵ所を経営、現在の年商は七十億で売上高は上がっているが、数量・収益とも減少している。
【坂本】車両の燃料費が三年前に比べて二倍になっているが、ドライブテクニック・車両の入れ替え等で軽油の使用量は減っている。現在十七台の車両で稼動しているが、燃料の上昇分を運賃に転化できない現状である。燃料費の売上高に対する比率は二〇数%と高いが、一リットルあたりの売上高は三年前に比べて二割ほど上昇している。
▼顧客ニーズに応え経費削減を工夫
【松永】昭和五十七年より十年間は廃材を燃料にしていたが、その後は廃油を炊くようになった。自分で安価な代替燃料を調達し、社員さんを一人でも多く迎い入れ長時間の営業を可能にした。しかし、当初ただ同然だった廃油等の需要が高まり、現在では調達が困難になりコストも上昇してきた。他の燃料もあるがコスト面で厳しい。
【吉岡】供給側の立場として、いかに皆さんに沢山消費してもらって沢山売ろうと考える時代ではない。省エネ・経費削減とかが叫ばれている中で、我々も同じ歩調で歩まなければいけないと考える。ニーズがある以上押し売りは求めず付加価値をつけての販売、要するに販売業から接客業への転換をはかり自社から買っていただくようにサービスに努めようと考えている。
【坂本】社員には単に売り上げを上げるということではなく一人一人に自覚を持たせ、いかに効率よく車を回すことが出来るかを考えさせている。月に一度の個人面談で燃料費、修繕費等の経費削減をトップダウンではなく、個人の自覚によって成し得ようとしている。環境破壊についても子や孫にきれいな地球を残そうと一人一人の意識に訴えている。
※今後の展望※
▼技術革新は省エネ型へ接遇で売上アップ
【松永】三年前にISO14001を取得し環境破壊防止に努めている。その中に品質も取り入れ社員の意識改革を行い、全員で接客アップ、顧客とのコミュニケーションに努め短期間で売り上げが二割上昇し経営状況も改善された。
最近のお風呂屋さんは疲弊して高齢化が進む状況だが、浴場組合ではエコは無駄のない生活が大切との思いでノー家庭風呂デーを推奨。家庭風呂を使わずに銭湯へ行こうとの運動を展開。今後は環境に軸足を置いて生き残りを図る。
【吉岡】昔は廃油等の処理はお金を払って処理してもらったが、今は松永会員などに買って頂ける時代、エコドライブ等の提案をする事で生き残りをかけている。
現在はバイオガスや新型ディーゼルのテスト段階に入っているが、コスト高がネックで普及につながらない。電気自動車・太陽光走行車等も同様にコストがネックになっている。
省エネは身の回りの行動から一人一人が考える事が大切と思う。お客さまとの会話で学ぶ事は大きい。今後は技術革新などで、地球環境に優しい今までと違ったニーズが出てくれば、そちらに転換する事で生き残れると考えている。
【坂本】黒煙を吐くトラックを見ると罪悪感があるが、現状を見ると設備投資には莫大なコストが掛かり、いたし方がないとの思いもある。しかし運送業は住民に対するサービス業でもあると思っている。今は一台に異業種数社の荷物を運ぶが、今後は同業他社数社の荷物を積んで効率を図りたい。
環境問題は、社員一人一人の心の中からいかに問題意識を引き出すかが大事と考えている。将来の子供たちに、どういった形で気配りできるかなどの事を社員の皆と共有しながら話していきたい。環境を考える事で生き残りの道があると考えている。
●座長のまとめ●
エネルギー問題は我々経営者にとって経費削減としての関わりのみならず、地球温暖化防止に繋がる企業の社会的使命ではないだろうか。今回は社員とのやりとりの中で自社の取り組みを導き出すことがいかに重要であるか、ご理解頂けたと思う。
中同協でも今年度CO2削減部会が発足し、県別で同友会コンペが開催される予定だ。大企業のように国から規制枠が来る前に、中小企業として自主的にCO2削減の取り組みを進めることが重要だ。今回のディスカッションを機に石川県中小企業家同友会を省エネルギー推進モデル地区として発信したいと思う。