委員会活動

【12.03.02】共育塾 特別講座 … 労使見解に学ぶ

人を生かす経営、全社一丸の経営とは

   共育学部では「人を生かす経営・労使見解」勉強会を中同協から赤石義博相談役幹事を招き、3月2日(金)開催、39名が出席した。以下、講演要旨。
◆時代背景を理解し理念を掴む
 経営とそれにまつわる労使見解は富士山の頂上を360度からぐるり見渡すようなもの、見方、登り方、それぞれ違う。それ位奥の深いもの。だからこそ真ん中にある理念をしっかりつかみたい。そのために、まず時代背景を学び理解することが重要だ。
 昭和13年、国家総動員法が制定。物資統制令では輸入原料を使った製品は軍に納めるか輸出しかない。50万人の中小企業事業者が転廃業した。そして太平洋戦争で、日本の生産能力が10分の1に落ちた。連合軍は日本が戦争に向かった原因の一つは財閥系企業が一般労働者を不当に酷使して競争力を上げ製品を輸出して、その輸出権益を守るためだと分析し、予め労働関係法を準備していた。そして戦後直ぐに労働三法を制定させた。大企業の競争力を抑える目的で労働組合を奨励し、中小企業にも同じ方針で臨んだ。
◆今の経営者はもっと困れ
 昭和21年、傾斜生産方式が始まる。これは戦後復興させるために鉄鋼業、電力、火力、石炭、肥料など重工業に重点を置く政策。一方、中小企業には週二回停電があった。ほとんどの中小企業経営者は労働組合とは何か分からないまま対峙していた。社長は、飯くらい腹いっぱい食べさせようと皆で一緒に食べ、社長の奥さんは社員の下着を洗濯する。これが住込従業員を使っていた中小企業の家族主義的常識。しかし労働組合では「食事の時まで監視付き、あげくに下着まで点検する」となる。こんな時代に経営していた。だから今の経営者はもっと困らなきゃダメだ。状況の厳しさについての認識が甘い。
 私は昭和8年北海道江別で生まれた。小学校6年生の昭和20年敗戦。10銭のあんパンが翌日10円になった。昭和21年4月、父親の王子製紙の退職金が2700円、10月にはゴム長靴が3600円。金というものはあてにならないことを実感させられた。だから金で人を動かす、働かせるというのは信じる方が可笑しいと思った。

  ◆5年で給料倍増を宣言
 実家の隣の次男が東京でしている東亜通信工業㈱に経営部門を任されて入社した。頼まれたからには成果を出そう。同労働で他では貰いえない位の賃金を出したいと思った。節約ではなく、カネ・モノ・時間の視点で誰の得にもならないものを無くせよと言った。5年間で給料を倍増することを宣言。仕事は一人の職人が全工程をやっていたので、誰でもできることと熟練工でしかできないことを整理した。高校新卒の女性を全国から採用し、工場に寮を作って70名になった。分業制をとって生産能力が飛躍的に上がった。
◆先手を打ち、世の中のために
 経営者とは経営技術者だ。だから先手を打つ。一方、理念をもって世の中のためにあたる二面性がある。
 昭和52年からは完全週休2日制を実施。これには組合も含めみんなが尻込みした。昭和60年、関連会社を含め108億を達成して全国(中同協)幹事長を引き受けた。同友会で学んで恩返しの気持ちだった。
◆仲間・集団への忠誠心を
 「落とし込む」なんて言葉は何事か。一緒になってやる姿勢からはそんな言葉は出てこない。人間は馬鹿じゃない。社長が本当に真剣なのかわかる。中小企業への入社動機は人から勧められた、友達がいた、通勤が便利、それくらい。社長への忠誠・愛社精神はいらない。しかし仲間に対する忠誠心、集団への忠誠は必要だ。そして仲間として社長、部長、社員がそれぞれの役割を果たす。労使間の利害の違いは認めよう。その上で、もっとも信頼できるパートナーになるためにはどうすればいいのかを考えた。
◆「労資」から「労使」へ
 昭和37年、同友会第3回全国活動者会議で「労資」から「労使」という言葉に辿り着いた。いつの間にか世の中も労資から労使に変わっていった。昭和50年、労使見解が決議された。文字を作るために13年かかったのではない。その間、労働委員の中からでさえ、労使交渉の心労から行方不明者や廃業者を出すなど実践の積み上げに多くの時間を要したのだ。
 社員は儲かっているか、いないかわかっている。しかし、領収証を持って来た営業部長には厳しく、片や高額の領収証を持ってきた息子には「体に気をつけなさい」というのが現実だ。社員が社員教育で目覚め、そんな会社に見切りをつけ辞めていく。
◆他人様の役に立つ生き様
 私が思うのは、我々は賃金だけで云えば別の会社の方が良かったかもしれないが、お客様に喜ばれ、世の中の役に立って、この社長、あの仲間と一緒にやってきた自分の人生は本当に胸を張れるものだったと言えるものをつくろうということ。人間らしく生きるとは、自分の頭で考える、そして自分で判断して他人様の役に立つ生き様だ。人は自分のことだと真剣になる。突き詰めると一人一人の人生の話だ。

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