【15.10.19】第30回経営者フォーラム
記念講演
「笑顔で気働き」がサービスの原点
十月十九日(月)第三十回経営者フォーラムがANAクラウンプラザホテル金沢で行われた。メインテーマは、来年九月に開催する中同協青年経営者全国交流会(石川)と同様の「つどえ傾奇者!歴史は一歩一歩に新なる創造である。」とした。記念講演は、「加賀屋の流儀~笑顔で気働き~」と題して、㈱加賀屋代表取締役社長の小田與之彦氏が講演し、約二百名が参加した。以下各分科会講演要旨。
第1分科会(青年部会活動)
「青年部活動と企業づくり」
三角 武一郎 氏 ㈱KSP 代表取締役/埼玉県中小企業家同友会 地区会長(前青年部会長)
祖父の代から警備業を営み、一族でいくつかの警備会社を経営してきた。父と母が経営していた警備会社を事業継承したが、家族経営的な会社で経営状態はあまりよくなかった。その当時、同友会の先輩に、「会社がそんな状況だからこそ勉強してこい」と背中を押してもらったタイミングが島根での中同協青年経営者全国交流会だった。その二日間で勉強したことが今の私の原点となっている。同世代の経営者のみなさんが経営について熱く議論を交わしているのを体感し、大きな刺激を受けて、自分自身も変わることができた。今では、「学び方を学び」「気づき方を築く」「正しく学び正しく実践」という同友会の王道の経営を実践している。
また、全ての幹部が同友会に参加して学びを共有している。全国の仲間との切磋琢磨と同友会での学びが「社員とその家族の幸福を考え、経営者自身の成長が大切」という気づきに繋がり、今の経営理念をもとにした、全社一丸の会社に近づいた。
三十一期事業方針である「二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックに向け人材確保と利益の向上に取り組む」に意識を集中し、東京オリンピックのその後の警備会社の未来も考えている。
今年一月にはベトナムにも会社をつくった。弊社は警備会社にしてはめずらしく幹部一同が若い社員ばかりだ。この幹部たちと、誰でも働ける会社づくり・街づくりをめざし、実績作りを第一に取り組んでいく。
第2分科会(経営指針)
「経営指針で未来を築こう」
玉田 善明 会員 玉田工業㈱ 代表取締役 /石川県中小企業家同友会 相談役(前代表理事)
四十三歳で三代目社長を継承。その二年前に同友会に入会して労使見解等の勉強をした。自社に初めて企業理念を作り、社長と理念がブレない事を心情として浮利を追わない、企業価値を磨く、社員を大切にすることで今日まで経営してきた。我々経営者は「真剣に経営に取り組んでいるか?」「経営者としての責務を二十四時間全うし続けているか?」どれだけ沢山の利益を出しても、社員が幸せでなければ意味は無い。
また、どれだけ崇高な理念があっても、会社が赤字で、ボーナスも給料も払えなければ同じこと。会社の業績と社員の幸せが同じレベルで、両輪でなければならない。そのためにも、経営指針を持ち実践していくことが大切。
経営理念は、ロマン・思想・哲学(フィロソフィー)。経営方針は、戦略・方向性。経営計画は、戦術・目標。社長の生き方、考え方が経営に表れる。理念は社員、お客様、取引先、世間に対するメッセージ。まずは、社長としての道徳観のある正しい考えをしっかりと持つ事が大事である。自分の考えがあるからブレない自分の道を歩ける。また、社員一人ひとりに考え(理念)を持たせることが人を育てることになる。理念を基に方針・計画を決めたら、経理公開などオープンにして行動する。オープンにする=裸の経営。みんなで稼いでみんなで分け合うという考え方。
全社員が誇りと使命感を持って働ける会社、社員の家族が誇りに思える会社を作っていかなければいけない。
第3分科会(社員共育)
「共に学び、共に育ち合う社風づくり」 人を生かす企業づくりとは??
八嶋 祐太郎 氏 八嶋合名会社 代表社員社長/富山県中小企業家同友会 副代表理事
当社は倉庫業、貨物運送業をしている。同友会で企業変革支援プログラムづくりの検討プロジェクト委員として携わり、社内での教育実践は二年目になる。
社員の不満の最大原因はコミュニケーション不足。不満・不安な社員に何をどう伝えればいいのか。大事なのはゴールイメージを共有すること、そして迷わず実践すること。ゴールイメージとは経営理念。理念の浸透については、自分達で作り、自分達で行う、そんな社員共育の場が確認の最適な場となると考える。
倉庫業は保管からロジスティックに変わった。ロジスティック思考の学習会を社内で企画し、講師役に選んだのは入社四年目の女性。準備を充分にして、当日は活発な質疑応答があり大成功だった。伝える能力のある人が社内にいることや、社員も聴く能力が備わっていることを発見できた。社内研修会は今後も継続する。同じことを繰り返すことに意味がある。同じことを繰り返すから重みがでる。同じことを繰り返すとやっと本気になる。
社風こそ一番の差別化要因である。同質レベルでの?い・低いの競争ではなく、異質なレベルで競争することが差別化戦略のポイント。社風をつくるのは「人」である。社風は生まれるものではなく、生み出すもの。どこからか授かるものではなく、自分達で獲得し、実践・継続するのも自分達。だから「人」こそ、会社の一番の財産。その一番の財産である人を輝くものにする考え方が、まさに「人を生かす経営」「人間尊重の経営」だ。
第4分科会(人材採用)
「新卒採用で経営者が変わり会社が変わった」~「この会社」から「うちの会社」へ~
川中 英章 氏 ㈱EVENTOS 代表取締役/広島同友会 理事・求人社員教育委員長/中同協 共同求人 副委員長)
広島市内でケータリングが主体で、飲食店、ワインショップなどを行っている。大学を卒業し教員として三年半勤め、バブル時代の一九八六年にケータリングを含めたイベント業を起業。即戦力になる人材を求めて、ホテルから料理人を引き抜いていた。その後バブルが崩壊し売上が激減、多額の借金を抱えた時、ブライダル会社との提携ができて、何とか会社を存続できることができた。
ある日、若手料理人が食材や食器などを横領していることが発覚したことで、同じ方向を向き価値観を作っていきたいという思いから同友会に入会した。共同求人で新卒採用活動をしていく中で、数字や労働条件を言うのではなく、会社のビジョンを訴えなければ学生は来ないと気づいた。八十名の学生が会社ブースに来たが、入社試験には六名しか来なかった。全員を採用したがイジメなどが原因で全員が辞めた。このことから、まずは安心して働ける会社を目指した。その後、今の若い社員が委縮しないように、空振り三振を奨励し、代わりに見逃し三振には厳しい社風が生まれた。
二〇〇八年には十年後の会社の姿を絵にしたビジョンポスターを社員と一緒に作り、そこには農業やレストラン、ウエディング、ワインショップなどを描き、これをきっかけに社員に経営指針が浸透していった。新卒採用をすることで自社のダメなところに気づくことができ、それを何とかしなければという気持ちが湧き、劇的に会社を良くしていくことができると考えている。