【15.07.01】「同友会の学びを活かして」(2)
井の中の蛙にならないために
㈲明峰電機 代表取締役
西出 稔 会員
今から二十六年前、三十歳の時に脱サラして、個人経営で明峰電機を創業した。前職では、対外的な業務は一切したことがなく、見積書の書き方も請求書の出し方も知らなかった。経営に関しては素人同然だった。半面、自分をかわいがってくれる顧客には恵まれ、業績を順調に伸ばすことができた。一九九九年にソフトウェア開発部門を独立させた子会社を設立。この際、創業からの十年間を振り返り、外の環境を知らない「井の中の蛙」になってはいないかと、自省した。そんな折、石川同友会からDMが届き、「ここでなら外の空気を吸いながら世情にも詳しくなれるし、何よりも経営の勉強ができる」と翌年三月に入会した。
同友会での学びの中で、これはと思うものは自社に採り入れてきた。「社会の役にたつ会社になる」「社会の役にたつ仕事をする」「社会の役にたつひとになる」。これは十年ほど前に経営指針成文化講座を受けて、自身でまとめた自社の基本理念である。
ファクトリーオートメーションの制御装置の設計・製造、ソフトウェア開発が中心業務であることから、社員にとって自分の仕事がどう社会に役立っているかが実感しにくく、当初は十分に浸透していたとは言い難かった。しかし、基本理念の創案とほぼ同時期に立ち上げた新たなグループ会社でパソコン教室を運営し、今年三月からはインターネットの地域情報サイト「まいぷれ小松」をスタートさせたことから、社員が地元自治体や多くの小松市民と直接触れ合う機会が増え、「社会の役にたつ」というフレーズが、漸く実感を伴うものになった。
同友会の例会を参考に、月に一回、グループ企業三社でローテーション化したプレゼン発表の機会を設けているほか、週三回、朝礼で社員にスピーチをさせている。プレゼン発表は業種が異なるグループ企業同士の理解を深めるには効果的で、朝礼でのスピーチも、社員一人ひとりが普段何を考え、感じているかを互いに知ってもらい、距離を縮めるのに役立っている。
社員から積極的な企画提案の相談も持ちかけられるようになった。「社会の役にたつ」という堅固な土台の上に築かれた風通しのいい社風が、明峰電機グループの武器として、今後活きてくるはずだ。