【17.08.01】次代を担う 次代を託す(14)
近江町の「衣」の文化を守る
吉村 浩史 会員 (株)丸年呉服店 代表取締役社長
大正十二年畳一枚で創業した老舗「株式会社丸年呉服店」は、近江町市場のバス乗り場のすぐ奥にあります。石川県を代表する加賀友禅や浴衣などが展示されており、その場で試着ができるようになっています。また近江町の中に日常生活品を扱う、もう一店舗もあり、社員は二店舗で十八名です。
十三年前に入社し、昨年は取締役、今年五月に幹部会議にて父である社長に「社長になる気はあるのか」と問われ、即答で「はい!あります!」と返答し、翌六月より五代目として代表取締役社長に就任しました。
「私もこの業界に携わって十年以上経ちますが、まだまだ呉服の世界は奥が深く日々勉強です。基本的なことはもちろん勉強していますが、仕立などはまだまだ覚えきれないことがありますよ」と、吉村会員。先代からは「知ったかぶりをするな。知らんことは教えてもらえばいい」と言われ、呉服と言う日本の伝統工芸を守っていくという使命は、知識だけでなく歴史そのものを知ることも大切だと感じています。
会社には先代が作成した理念があるのですが、社員が高齢化していることや、昨年の青全交で全国の会員と交流した時に、経営指針の大切さを改めて実感し自分なりの経営指針を作りたいと、今期の経営指針成文化講座を受講中です。「人を生かす経営」を学び、「こんな風にできるのだろうか、こうなりたい」と徐々に意識も変わり、社長として次世代にこの会社を繋げていきたいと強く感じるようになったそうです。
実は近江町には、食の文化もあれば、服などの生活品の文化も昔からあります。しかし近年、観光客をターゲットにした食文化の場所というイメージに変わってきているそうです。「近江町の『衣』の文化を守りたい」そんな想いを形にした「着物レンタル事業」を展開するため、近く日常生活品を扱っている店舗をリニューアルすることが決まりました。
吉村会員の、伝統工芸や近江町に対する深い想いに触れて、「守る」ということの難しさと大切さを改めて感じたと同時に、その思慮深さに時代を担う覚悟が垣間見えたように思います。