【19.04.01】事業承継(34)
「あり方」の実践で「人が育つ会社」へ
萩野塗装 株式会社
代表取締役 萩野 充弘 会員
同社は昭和21年設立、建築物、橋梁、鉄塔の仕上げ塗装を行う会社として創業73年をむかえ、石川県でNo.1施工シェアを持つまでに成長しました。
萩野会員は高校・大学時代に空手で活躍し、県外の塗装会社で修行、5年後に地元へ戻りました。その頃の社内は他責の言い争いが絶えず、目先の結果ばかりを追いかける状態で、会議も無く採用も無し、平均年齢だけが年々上昇していく状態でした。
29歳で同友会に入会、「楽しく明日も行きたくなる会社」を夢見て例会に参加し、刺激を受けた内容を社長に提案するも、否定されることが5年以上続きました。何とか実践しようと意気込んで会社へ向かうのですが、途中の階段で、変化を嫌う先輩社員の目がちらつき、5段目あたりから「やっぱ
り今日はやめておこうよ」と悪魔の囁きに負けてしまっていました。その結果、目先の仕事にしか向き合えず、想いと現実が全く近づかない葛藤の日々が続きました。
35歳で青年部会に入会、2013年の経営者フォーラムで「社員共育力とはその会社の風土、人を育てる風土である」、この言葉を聞いてこれまでの実践は「やり方」(手法)ばかりを真似しようとして、肝心な「あり方」に向き合っていなかったことに気づきます。
後日、職人さんを集め「あり方」の大切さを語り、打合せ程度の朝の集まりから、初めて安全朝礼の実施をお願いしました。この朝礼の実践で、よい会社へ1ミリ進んだことが自信になり、一歩一歩が重かった階段がとても低く見え、少しの勇気でこんなにも景色と気持ちが変わるものなのかと前進
を実感しました。
それからの会社は劇的に変化しました。年配社員は経験を語り、新入社員が日々の質問を先輩に聞く品質向上委員会、日本一キレイな塗装屋さんの倉庫を目指す5S委員会、皆がクスっと笑って出社するネタ豊富な脳活タイムなど、全社員参加型の職場づくりを実践しています。
2018年には、北陸青年経営者三県合同例会の報告者を務め、経営指針成文化講座を受講しました。理念は朝礼や会議を通し社員と作成し、社員それぞれが個人目標を書き込み、目標に向かって成長できる大切さを日々共有しています。そして同年、代表取締役へ就任しました。
お客様、社員、地域との信頼関係を築き、物心両面で豊かな三方良しの企業、仕事を通じて「あなたに会えて良かった」と言われる「人が育つ会社」を目指し、100年企業までの道のりを熱く語ってくれました。