【21.04.01】事業承継（57）

事業承継は樹木

コーケン株式会社 代表取締役社長　
岡村　謙作 会員

同社は、1962年創業の建築資材商社で、内装資材を主に、軽量下地材、キッチンや水回りなど各種資材を建築会社に販売、設置施工を行っています。　
■同友会は「参考書」の宝庫
　岡村会員は、大手ゼネコンに勤めて10年経った頃、父親からの承継の要請を受け、「他の誰にもできないトンネルや橋を創る」という夢があり一時は悩みましたが、自身の力を試すチャンスとして決心し入社、3年後の2007年に社長を受け継ぎ、父親は会長に就任しました。
　就任後は、会長と役割分担し、「代表が2倍（人）になるから、売上も2倍にしよう」と意気込み、富山に進出など拡大路線を図りました。両代表として役割を分担するのは、自由に行動できる反面、会長に経営を教わることができず戸惑いましたが、お客様や仕入れ先、そして社員から要望や不満も何でも聞き入れる姿勢で応え、経営者として育てられました。
　同友会入会は、営業先で出会った金谷代表理事からの紹介でした。「元気な人の話を聞けて嬉しい！」として、同友会活動でも多くの経営者から話を聞き入れ、悩みを共有できる人、気づきと発見を得られる人と出会い学んでいきます。同友会では、経営を学習する「教科書」は無くとも、様々な会員の経営体験から自社を見出す、いわば「参考書」の宝庫だと言います。

■支部も会社も「軸」を大切に承継
　岡村会員は、2020年度から金沢駅西支部長を担っています。継承した支部運営の考えは、「今まで大切にしてきた信念である『軸』を中心にどう周囲を幸せにできるか」です。引き継いだ「軸」を根底として支部会員一人一人の個性を引き出し、重なり合い成長していく組織にしたいと思っています。
　一方、経営も同様な考えとするのは、同社が設ける富山・石川各地の拠点で、それぞれ地域の特性が同じ北陸でも異なり、営業の仕方が変わるからだと言います。会社の「軸」を保ちながらも、地域に合わせた個々の特性を生かすことが必要で、その「人を生かす経営」が仕事に関わる周囲すべて人を幸せにできると熱く語りました。
　同友会活動と経営は不離一体として、事業承継を「樹木」に例えます。「どっしりとした根が太い幹を形成し、その根幹が個性を一つ一つ重ね育つ枝葉を支え、どんどん大きな木になる。その木が大きくなるにつれて、景色は高くなり広くて遠く見据え幸せな未来を描くことができる」と希望に満ち溢れた表情で話してくれました。