【21.11.01】クローズアップ同友会型企業づくり(42)
記憶に残る楽しそうな10年ビジョン
大協運送株式会社
代表取締役社長 津田 淳一 会員
2018年2月、第11期経営指針講座の経営指針発表会が行われました。本来は受講者家族や社員、共学者が参加対象ですが、私(取材者)は次期の講座を受講する予定があったため、聴講しました。発表者への共学者からの叱咤激励は、かつてこれほど張り詰めた空気を経験したことのないほど強烈な緊張感を感じました。
そんな中、一人の発表者に会場がくぎ付けになりました。大協運送株式会社の津田会員です。言葉や文章でなく、イラストで描かれた楽しそうな10年ビジョンは、その人間性を連想させ、会場の雰囲気が一気に和みました。運送会社の社長で、外見もそれなりの強面が汗を吹き出しながら発表する姿に皆が勇気をもらい、共学者は激励に終始しました。
私(取材者)は2018年度12期生として指針講座を受講、しかも同じグループで共学者になったのは相応のご縁があったのだと今振り返りながら、近況を取材しました。
■理念を掲げ社員が率先する会社へ
「様々な難局は、理念があったから乗り越えられた」と津田会員は語ります。社長就任後、離職が多い業界の問題もあり社員は10人ほど入れ替わりました。社長就任時に掲げた経営理念、それに反する人も辞めていきました。しかし、都度判断を迫られたとき、理念が後に立ったといいます。
それまでは、俺が俺がと自分一人で抱えていましたが、理念を掲げると、それに賛同してくれた社員は、自分に頼ることなく皆が自主的に動き出してくれました。
新入社員教育は、仕事のスキルアップだけでなく理念を取り入れた教育を実施しています。就業規則制定への取り組みは社員がすべて率先しました。津田会員は「言葉にすると願いは叶う、考えるだけでなく発信すると誰かが助けてくれることを実感した」といいます。
また同社では、会長の趣味だった養鶏を社内で事業化しようということになり、活動の輪は地域ぐるみにまで広がりました。そこから地域貢献、地域循環型に繋がったことでSDGsに取り組み、宣言も行いました。この鶏卵販売の事業を紹介してくれた高見取締役は「社長はやりたいことは細かく言わず大まかに言います。私達は概ね理解して自分達がやりやすいように進めるのですが、社長はそっと見守ってくれます」と笑顔で語ってくれました。これを聞いたとき、取材している私はどうだろう?と、コツンと胸を打たれた気がしました。
■父親への感謝と伝承
津田会員は指針講座を受けた後、昔取り外した父親(現会長)が掲げた「理想の社員」の額を押し入れから取り出し、表玄関に再び掲示しました。そして55周年記念行事で父親に感謝を伝え花道を飾ったそうです。
感謝こそ口に出すこと!「歌舞伎には襲名という言葉があり、何代にも渡り全ての歴史を背負っている先代に対する感謝こそ、伝承という形でつながるのだ」と話してくれました。