【22.09.1】クローズアップ同友会型企業づくり(50)
事業を通じてたくさんのありがとうを作る
株式会社河内物産
代表取締役社長 河内 勇二 会員
1974年、鶏の飼育、処理、解体、鶏肉の販売まで行う会社として創業。1991年、食鳥検査制度が施行されると、北陸では飼育から販売まで一貫して行うことができる北陸唯一の会社となりました。現在は加工と販売をメインに行っています。
■経営理念は会社の財産
当初、河内氏は臭い、汚い、誰も寄り付かない家業を好んでいませんでした。することがなかったから入社したのが始まりです。物を売ればいい、親が築き上げた販売先がある、それにすがる自分に、自分軸はありませんでした。しかし、2010年代表取締役社⾧に就任し、2011年同友会に入会。そこから思考が変わっていきます。命をいただく現場を目の当たりにしている会社だからこそ、そのありがたさをしっかり伝えることが大切だと気づきました。同友会の経営指針成文化講座で作成した経営理念「わたしたちは事業を通じてたくさんのありがとうをお作りします」は自分軸となり、会社の財産になりました。
■逆境が決断させた新事業 「KITOプロジェクト」
コロナ禍で価格競争は激化。大手2社との取引が解消となった上に右腕だった幹部が倒れ、大変な窮地に追い込まれます。惨状を少しでも改善するために、2カ所の加工所を1カ所に統合、そして断腸の思いで社員のリストラを実施しました。
河内氏はこの逆境で、経営理念に立ち返ります。命の大切さと、感謝を伝える環境を確立したいと強く感じ、それまで温めていた新事業を立ち上げる決断をします。
新事業「KITOプロジェクトは、本社向かいの5,000坪の広場を私設公園として開放。芝生を敷き、ベンチを設置、ドッグランやニワトリが走り回る庭、地域の方の憩いの場を作ります。そして商品を直接、消費者へ届けられる直売所を建てました。
■業界の価値観を変えるクラウドファンディング
直売所の目玉は希少な鶏の白レバーを使ったパテです。鶏レバーは売れないからと流通にはほとんど乗らず、大量廃棄されるフードロス問題を抱えています。消費者と生産者で商品を作り、業界の価値観を変えていくことで、このような社会課題を解決したいという思いがあります。
河内氏はパテ作りの設備導入とデザイン資金のためにクラウドファンディングを実施。目標300万円を超える336万円の資金調達に成功しました。「自社だけでは頓挫していた。仲間や社員の頑張り、多くの方の支援で夢の実現に近づいた」と話します。
7月22日、このプロジェクトはグランドオープンし、木陰でくつろぐ人やドッグランに集う愛犬家で賑わいました。直売所では、生産者のこだわりを聞きながら商品を選ぶことができ、鮮やかな緑と青空の下、日曜日には焼き鳥も販売しました。「鶏肉生産にまつわる問題を知ってもらうきっかけとし、未来を担う子供たちの食育の場にしたい」と、今後の展望を熱く語る河内会員。今はまだ夢の序章が始まったばかりです。