【08.06.17】兼六支部6月例会
『感性に焦点をあてた顧客満足度アップ教育の試み』 多賀 千之氏 芳珠記念病院副院長・小児科医師
平成十六年に異業種交流石川MOTセミナーに参加。名刺を持っていなかった私は、名刺交換の場で医師は名刺が無くても支障が無かったことに気付く。同時にこれでいいのだろうかと感じ、患者様との信頼関係を築くために名刺作成を決意。内容、渡すタイミングなど試行錯誤の結果、好評を得る。名刺を渡したことで今まで以上に丁寧に患者様に接している自分の変化にも気付く。職員教育を担当している私は名刺作成をきっかけに、教育とはこうゆうことかと気付く。教育の最終目的は、行動を変えること。行動を変えるためには「感じる」「気付く」「考える」「行動する」というプロセスの最初の「感じる」が重要ではないか、「感じる力」を高めるには『感動の繰返し』が効果的ではないか、と考えた。「感動」で思い出したのは、身の回りにある文章だった。そこで、私と看護師、事務員の三名で①素敵な文章、言葉を一週間で一つ見付ける。②月曜日にスクラップブックに貼る。③火曜日昼迄に三人が読む。④火曜日昼休みに二十分程度、感想を話し合うという『感性トレーニング』を始めた。当初の感想は、「日曜日の夕方になると焦ってくる。」「やっと宿題が終わった」というもの。四ヵ月後、「お互いの心や人間性が理解できるようになった」「日常全てが、くっきりすっきり見えるようになり、患者への声掛けがスムースになった」に感想が変化し、自分自身の感情を知る力が向上したことが分かった。そして外来患者への「顧客満足度アンケート」で、小児科がトップとなった。この効果を病院全体に展開するため、文章を配布し読んでもらう「読むミルク」プロジェクトを開始した。その狙いは『素敵な文章を読むことで、感動・発想・意欲などのポジティブな心の動きを生じさせる』ことだった。結果、職員から「患者との接し方が変わった」「周囲にも自分にも優しい気持ちになった」「スタッフと深く話し合えるようになった」等の感想があった。患者様からは「職員の方々の言葉掛けが優しくなった」と評価されている。感性教育というと子供への教育のように思われるかもしれないが、我々大人こそ感性を失っているのではないか。大人にこそ感性教育が必要だ。